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「え、いや、そんな大げさでなくても」
「まず風呂っ!」
「えっ」
「こんな汗かいたまんまで初の外デートとか、俺やだからね」
早く立って、と凄まれて、光稀はあわあわと立ち上がりながら、ハハッと笑ってしまった。
「なに笑ってんの」
タオルケットを巻きつけて、ふらふらな様子で立ち上がった紫音に、光稀は抱きついた。
「あんたって、怒ってる時が一番元気いいのな。なんか抱きしめたくなる」
「べ、別に怒ってるわけじゃ・・・」
「けど熱上がってくるなら、今度でいいからな」
「え? ね、熱って・・・・」
光稀はこつんと紫音のおでこに自分のおでこを当てた。
「あるだろ、熱。なんか背中とかも火照ってたし」
「ち、違・・・っ、君、それもわざと?!」
「え?」
「君のせいで熱いの! 分かれ、そのくらい!」
真っ赤になってキレられて、光稀はぽかんと口を開けたが、それから2人でバタバタ風呂に入って着替える間、ずっと顔がニヤけて仕方なかった。
激しやすい恋人が頬を染めたり、真っ赤になるたびに、何か ー 『幸せのカケラ』とでも呼びたいような温かいものが、今なお不安の色濃い恋人の心を、少しずつ明るくしていくような気がして、光稀は嬉しいのだった。
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