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とろけるキスを君の心に 前編
くおー、と大の字で眠る光稀の寝顔は、いつ見てもあどけない。
彼にだって深い傷や闇があるのに、それを感じさせない朗らかさで、紫音の崩れがちな心を守ってくれている。
好きで好きで、たまらない。
紫音は彼の胸に頬をすり寄せた。
『皇輝』、と声には出さずに呼びかける。
紫音の恋人は、出会ったときは『光稀』じゃなくて、『皇輝』だった。
自分が夢魔であるとは知らず、目の合った人を眠らせてしまうという忌まわしい力を封じるために、ずっと目隠しをして孤独に生きていた。
だからか、彼は人の痛みに敏感で、心が傷だらけの紫音を決して脅かさず、紫音の方から手を伸ばすのを待っててくれた。
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