双子星、そして泪。

2/11
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
僕らははるか昔地球という青い星に住んでいて、その世界は上から光が降り注ぎ、朝と昼と夕と夜があったという。 「しかし太陽がブラックホールとなり――」 かさかさと細いペンがノートを引っ掻く音と先生の声が教室に窮屈気味に響く。僕はインク壺に硝子のペンを突っ込んで、メモ書きをする。あ、誤字。 「そのことにより地球はブラックホールに飲み込まれ、人類は移住を選ばざるを得なくなった。しかし惑星は粗方太陽に飲み込まれ……、生徒番号31052番、人類が移住地として挙げていた惑星の名を挙げよ」 青い空なんて見たことないけど、僕は空を空想する。鳥を空想する。太陽を空想する。僕らにとっての光源は足元から照らすフロア・ライトであり、それは燃える星の熱源を利用した人工的な光である。フロア・ライトを遮らないようにガラス製の机や、マジックミラーの屋根が出来た世界で。僕は…… 「生徒番号31052番、朱殷(シュアン)。いないのか?」 「おい、朱殷、なにしてるの」 ととっ、と背中を突かれて僕は思わず勢いよく立ち上がる。 「はいっ」 「質問は聞いていたか?」 ええと、と口ごもる。少年特有の抜き身のナイフのような瞳がこちらをじいっと見つめる。隣に座るブロンドの髪と見事な青い瞳を持った少年がくすっと笑ってから彼のノートを指先で叩く。 『地球の人類が移住地にあげていた惑星は?』 「あ、……地球の人類が移住地にあげていた惑星は……、火星、です」 「座ってよろしい」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!