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天鵞絨が首を傾げる。ブロンドがさらさら揺れた。僕はここ最近ずっと思ってたことを言う。
「君たち、ほんとうに危ないことしかしないんだもの。見てられない。なんてったってあんな危なっかしいことばっかりするの」
「ああ……」
階段の直前でまた彼はくるりとターン。すぅっと踵を上げた立ち姿はうつくしい。僕は恐る恐る階段を降りていく。
「この学校はね、なかなか死ねないから」
さっさと階段を降りた天鵞絨が、踊り場から僕を見上げる。
「死のう、って、思わない限り。この学校では死ねない。だから、危険なことに手を伸ばす」
「……どういうこと」
「僕らは青春が終わるまで死ねないってことだよ。そして最後には青春に殺される。さあ行こう。君、階段が苦手なようだけど、手を貸そうか」
「……いらない。朱殷は階段得意だから」
階段を見下ろすと飲み込まれそうな気がして本当に苦手だ。手すりを握る左手はじっとりと嫌な汗をかいている。今まではカプセル型のエレベーターを使って昇り降りしてたものだから、階段は久々だし。
「でもね、君。購買部って一番下なんだよ。ここから四つも階段を降りなきゃ」
「だって……」
「聴、君、案外朱殷と似てないんだね」
「うん、僕らはまったく似てない。似てるのは顔だけ……」
深呼吸してから階段をまた降り出す。恐怖で膝が震えて、その事実でまた恐怖が増す。こんなガタガタ震えた足できちんと階段を降りれるはずもない。いつか絶対落ちてしまう。そんなことを思うから、どんどん恐怖が増大して膝が震える。
スパイラル。
それでもどうにか階段を降り終わる。一番下、が、購買部、で、今は五階。階段四つ。目眩がしそうだった。
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