双子星、そして泪。

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実に興味深そうに天鵞絨が言うので、僕は少し笑う。一階には緻密な作業を行う部屋が多い。あちこちで機械の電動音がする。そんな部屋と部屋の隙間に購買部、と看板を立てた部屋はあった。 「ルナ!」 「ルナって呼ぶなって、ロッド」 店番らしき生徒は椅子に座ったまま不機嫌そうに天鵞絨に答えた。わあ、と声をあげそうなくらい綺麗な少年だった。ミルクにはちみつを一匙入れたような色の髪と瞳。ああ、あと僕は似ているものをひとつ知っている。 月。 「あれ、朱殷、ずいぶん久しぶり……」 天鵞絨の背後に立ってた僕を見た店番は、ちょっと考え込むように唇に人差し指を添える。 「あ、えと」 「あんた、朱殷じゃない、よな」 「……うん」 「そう。ああ、別に、緊張しなくても。僕は月白(ゲッパク)。そこの馬鹿みたいにルナなんて呼ぶなよ。それ以外ならどうとでも呼んでくれて構わない。君は」 「聴。よろしく」 「よろしく」 そろそろと購買部部室に近寄る。大きなガラス製のテーブルにぎっしりとステーショナリーが並んでいる。いくつか手に取ってみる。そう言えばどうして僕はここまで連れてこられたのだろう。 「……あ、君」 さっ、と月白が唐突に立ち上がる。手に持っていたインク瓶を思わず落としそうになって慌てて机の上に戻す。 「君、……確か、妹って聞いたけど」 「……そこまで聞いてたの」 ちら、と天鵞絨の方を見る。彼はあおいろの瞳を細めただけだった。彼にはバレてるのは分かってた。僕は朱殷の制服の裾を握りしめる。 「なるほどね。だからこんなところに連れてきたって言うのか。……ロッド、これは僕にもどうしようもないぞ」 「それくらいは知ってるさ。しかし僕一人でどうにか出来ることでもなし」
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