痣痕

3/12
前へ
/35ページ
次へ
 今、美姫は、穏やかに寝息をたてて大和の隣で眠っている。  大和は、美姫の頬から首にかかる艶のある黒髪をそっと払った。  細くて白い華奢な首は綺麗で、もうあの日の痣は跡形もなく消えていた。  美姫は、記者会見が終わった後で来栖秀一に会いに行くと言った。  『俺も、一緒に行く』  その俺の言葉を拒否し、美姫は一人で行かなければいけないと言い切った。  これは、ふたりの問題だからと。  線を引かれたような気持ちになって胸が苦しくなったが、美姫の決断は固く、覆せるものではなかった。  美姫、どうか俺の元に帰ってきてくれ......  俺には、祈ることしか出来なかった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加