痣痕

4/12
前へ
/35ページ
次へ
 記者会見が終わると、俺たちは急いで別の服に着替え、従業員しか知らない通路を抜けて裏口へと出た。  そこには、白のプリウスが横付けされていた。  凛子おばさんが用意してくれたレンタカーだ。  俺たちの姿に気付いたおばさんが運転席から降り、俺と替わった。  おばさんは美姫に何か声を掛けてから、俺に手を振って立ち去った。  これから、おじさんの病室に戻るのだ。  美姫が急いで助手席に乗り、扉を閉めたのを確認するとアクセルを踏む足に力を込める。  来栖秀一の待つ成田空港に、美姫を届けるためだ。  「ごめんね、こんなことまでさせて......」  申し訳なさそうに謝る美姫に、俺はサングラスを掛け、真っ直ぐ前を見つめたまま言った。  「必ず、戻って来いよ」  「うん」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加