5人が本棚に入れています
本棚に追加
空いた手から伸びる指が、ガタガタと音を鳴らすコースターのレーンを差す。
まだ出発ゲートに居る乗り物から伸びる、上まで引っ張る為のチェーンが、ギリギリと音を響かせていた。
「怖いものだ、恐怖に震えるものだ、叫ぶ乗り物だと、そう言う固定観念があるからこそ、怖い怖いって思うんだよね」
「だって、怖いものでしょう?」
陽気な掛け声がして、出発ゲートを沢山の人を乗せた箱が、ゆっくりと出発した。
ガタガタと、登っていくコースターを二人で見上げ、まるで青空に吸い込まれて行くような光景に、思わず胸が踊った。
「じゃあさ、なんで観覧車は怖くないの?」
「だって、ゆっくり回ってるだけだもん」
絶叫と悲鳴が歌のように響いて、遠くへ走って行く。
さも当たり前の様に、彼は私へ、不思議だと言いたげな視線を向ける。
この目はよく知っている。
物凄い答えを言おうとする時の瞳。
無邪気で楽しそうで、それでいて何よりも凄い答えだと言いたい時の、キラキラ輝く瞳。
最初のコメントを投稿しよう!