574人が本棚に入れています
本棚に追加
「アシッドポーションを作るにはこの酸っぱい草を煮詰めて~っと~。
てか"酸っぱい草"がそのまま名前なんだぜ?センス無さすぎだろ!」
「お前それ未識別って意味だぞ。知らないのかお主」
俺の家を訪ねていた薬屋の娘が言った。
「えっ」
チュドーン。
「えっ」
二回目の「えっ」は小娘の言ったものだ。
俺は突然爆発した。
正確には俺がポーションを作るために鍋に入れた未鑑定(!)の酸っぱい草が水分を含み、膨張。そのまま破裂し、俺に熱湯の滴が当たった。
「うあちちちち、熱い、熱い!!!」
これはちょっと洒落にならん。リアクション芸なんてまっぴらごめんだ。
当然、火傷の状態異常にかかったため、俺は急いで、棚にあったポーションを飲み干した。
「ふぅ、これで助かっ――ぐふぅ!!?」
突然の腹痛。俺は腹を押さえてその場にうずくまる。
それを見ていた薬屋の娘が冷ややかに言った。
「……手袋をしなかったからそうなるんじゃ。」
「ぐうう、しまった、俺は毒手持ちなんだ……」
毒手。俺が二年前に身に付けてしまった能力だ。
簡単に言うと、利き手じゃない方の手から毒を出せる。直接触れて攻撃するのも当然、飛び道具のように手から一直線に放ってもよし。ただし猛毒ではない。それでもそのへんの魔物には十分過ぎるほどの威力だし、人が死なない程度の効力なのはかえってありがたい。それでもこのように腹痛を起こしたりするが。
ただし、一見役に立ちそうでこれが短期戦では結構微妙なため、使用者は極端に少ない。対人戦になると解毒ポーションで簡単に治されるし、ちょっと面倒な仕組みなため、毒手を普通の手に戻すのも大変だし。
それだけの能力。
「それと、さっきの草は『火薬草』。
リアクション芸お疲れ様です、なのじゃ。なかなか面白かったぞよ?」
「他人事だとおもって、ぐふふぅ」
「というか、自分にも毒が効くのか~。」
「うふふふぅ」
「ほらよ、解毒ポーション。」
小娘は俺の顎をくいと上げて持っていた小瓶の中身を飲ませた。
手に触れさえしなければ、俺の毒は関係ないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!