第1章 若気の至りだったんです

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「カリン……ありがとう」 「なんじゃ、急に素直にわしの名前を呼ぶようになって、気持ち悪いのう~」 やっぱお前、キツいだけだな。 「今までつっこむ暇も無かったが、『小娘、小娘』ってお主、わしと同い年じゃろ!?」 「そうなんだよなぁ……なんだってこんなちんちくりんと俺が同じ……ぐほぉ!?」 足蹴を食らった。 「キックはねえだろキックは!!?」 「うむ、しかし、お前の悲哀はよ~く分かったぞよ。 こんな健気な若者が将来の希望も無く内職だなんて、お前とこの国の未来が心配なのじゃ。 ……とはいえコヤツはまだまだ未熟者……だとすると、ふむ……、そうじゃ、あれじゃよあれ、あの手があった!ワシが直々に掛け合ってみよう」 俺の抗議にも関わらず、何やらぶつぶつ言い始める。 てか「若者が~」とかお前やっぱ同い年じゃないんじゃないのか。むしろ年増っぽくね。 「お主、出掛けるぞ!」 「なんだよカリ……小娘。」 「なぜ言い直すのじゃ!?」 「俺にも幸樹――コーキという名前があるんだが。 もう初めてまともに会話してから一ヶ月になるぞ。 いい加減覚えてくれ」 「今しがたまで不幸ぶってた奴の名前とは思えんのう」 「うるさいわ!!……っと話を戻して――、 出掛けるって?どこへ?」 「わしのお師匠様のところじゃ!」 「師匠って、父お……薬屋の主人か?」 そういえばカリンは薬屋の、養子だった。 彼女は薬屋の主人のことを父親と言うと嫌そうな顔をするため、俺は気を使って主人と言っている。 「違う、あれはあくまでも養父じゃよ」 「違うなら……誰だよ師匠って」 「来ればわかる」 そう言うと、おもむろに外に出る。 風がカリンの髪を揺らした。 「おい、待てよ、行くのは良いけどいくらなんでも唐突過ぎんだろ!」 俺は鍋の後始末もせず、走ってカリンの後を追った。
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