世界の半分

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 建物の横腹に、爆薬か何かで乱暴に吹き飛ばしたと見える1メートル四方ほどの人為的に造られた大穴が開いていた。大人3、4人は余裕で入れるであろう分厚い壁をくぐると、その先には底も天井も見渡せない程深くて高い、薄暗くて広大な吹き抜けが壁全体から発せられる青白い薄明かりの中で広がっていた。予想だにしなかった光景に、男は思わず立ち止まる。このことはつまり、遠目には周囲の卒塔婆の残骸と大差無い高さのこの建物が、その実半分以上砂の下に埋もれていることを指し示していた。  横穴の周辺こそ日中に吹き込んだ砂で白っぽく汚れていたが、そこから先に延々と続いている螺旋階段は不自然なほど清潔で、塵の一粒すら認められないようであった。壁面、階段、天井となく建物の内面全体が青白く発光している。男は砂にまみれた毛皮の外套を脱ぎ捨て、ゴーグルを外した。後頭部で1つに結ばれた長い黒髪、麻のみすぼらしい服の下から覗く鋼のように鍛えられた腕。黒い瞳は周囲の光を反射し青く輝いている。その腰には男の身長ほどもある長大な刀が鞘に納まっており、革のベルトで乱雑に巻き付けられていた。  男はそのベルトの隙間から汚く折り畳まれた紙を取り出した。そこに「108-b」とだけ記されていることを確認すると、その場で紙を細切れに破り捨て、周囲を見渡す。そしてしばらくすると螺旋階段の手摺から身を乗り出し、吹き抜けの反対側1つ下の階の暗がりに何かを認めた。  エレベーターの扉であった。
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