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「お前に世界の半分をくれてやろう」
よーし、わかった。うん、おーけーおーけー。俺は冷静だ。
確かに、俺には使命がある。目の前の魔王を倒して、世界を救うという重大な使命だ。
この使命に対して、世界中はおろかご先祖様や精霊たちも俺に期待している。だから魔王を倒すことは絶対にやり遂げねばならないんだ。
だから常識的に考えて、この提案に乗るわけにはいかない。当たり前だ。世界の半分をくれる、ということは、言いかえれば残りの世界半分は魔王の好きにするという意味だ。これはいけない。
魔王は他人の命なんて何とも思ってないからな。例え半分でも世界を与えたらどんな非道な事を行うかわかったもんじゃない。
でもこの思考はダメだ。クールに行こう、クールに。こういうときこそ冷静になるべきだ。
確かに、俺は世界を救いたいと思っている。そのためにたくさんの人々の協力を得て今ここにいる。
しかし、だ。本当に世界の全てを救う必要があるのか、と少しだけ疑問が残っている。世界は全て優しいわけではない。
犯罪が横行している街もあった。すでに壊滅している平地もあった。ムカツク奴がいる村も知ってるし、俺をカジノでハメた奴もいる。
そんな奴らも含めて全てを救うのが俺の使命なのか? 少し悩むところだ。
それに世界を救った後も問題だ。目の前のこいつを倒せば、俺は世界を魔王の手から救った勇者として崇めたてられるだろう。世界中が大喜びするだろう。でもそれだけだ。
俺が世界を救ったところで、世界は結局王様のものだし、平和にこそなれ普通の日常が続くだけだ。
翻って俺はというと、世界を救った勇者様としてもてはやされるだろうが、それだけで今までの生活は変わらないだろう。むしろ魔物が減る分、俺の仕事が減ってしまうかもしれない。これは困る。
それに、魔王の挙動がめちゃくちゃ気になる。
マントの裏側に何か隠しているようだし、明らかに力を溜めているようにも見える。俺がノーと言った瞬間攻撃してくるのだろう。
確実に魔王に勝てるとは限らない以上、例え半分でも確実に世界を救った方がいいのではないか。
うん、決めた。俺は世界の半分を取る! よし、魔王。俺と手を組んで世界を支配しようぜ!
「わかった。ではお前には世界の半分、男の世界をやろう」
……ああ、今聞こえた変な声は俺のか。マジかよ。
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