5つ目の半分

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5つ目の半分

「ほら、言えよ」 「あ、は、は?」 「ほら、言いたいことがあるんだろ? 言っていいぞ、早く」 「は、はい! お、お前に世界の半分をくれてや……あげます」 「……ハァ、まあそうだよな。そうくるよな。そりゃそうだ、当然の成り行きだ」 「は、はい。すいません」 「別に謝らなくていいよ。さすがに何回も魔王を倒しただけあって、そっちの考えもなんとなくわかるからさ。確かに怖いよな、勇者の俺が。絶対倒せないと思ってた軍隊や四天王を何度も撃退して、絶対に踏破できないと思っていた魔王領を突っ切ってきて、絶対進攻できないと思っていた魔王城に攻め入ってくるなんて、想定外も甚だしいもんな。そりゃ怖いよ、そんな事を実行できる化け物が目の前にいたらさ」 「え、えと、その、何と言いますか……」 「だから魔王が提案したくなる気持ちもわかるようになってきたんだよ、最近は。だって今まで倒してきた魔王もだいたいおんなじこと言ってたからな。世界の半分をあげるから平和的に解決しようとか、話し合えばわかるとか、魔王の私に敵うと思ってるのか今なら配下に加えてやろうって脅してきた奴もいたな。それに半分とはいえ世界を支配させることで、自分と同じ立場にしてしまおう、そうすれば奴は一方的に私を攻撃しては来れないだろうとか、そんな打算もあるんだろ? 実戦での戦闘能力はともかく、領地支配に関しては自分は先輩なんだから、先手を取ることができるとかそういうことも考えてるんだろ、な?」 「い、いえそんなことは、滅相もありません……」 「いいよいいよ隠さなくて、怒らないから。わかってる、わかってるんだって。確かにお前は人間の世界を脅かす魔王だけど、魔王からしたら自分の命を狙うことに特化したスーパーソルジャーが目の前にいるわけだもんな。怖くて当然だと思うよ。だからそれを提案したこと自体は怒らないよ。……でもさ、問題は別にあってな。そっちの方が不愉快なんだよ、オレは」 「い、いったい何が不愉快なのですか?」
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