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2つ目の半分
「お前に世界の半分をくれてやろう」
「ええ、わかりました。では世界の半分を戴きたいと思います」
「お、おう。随分と物わかりがいいな。それでこそ私が認めた……」
「そんなお世辞はどうでもいいので、話を進めましょう。まず世界の分け方についてですが……」
「え、分け方? 普通に半分でいいんじゃないか? ほら、この地図のここら辺をズバッと等分に……」
「何を言っているのですか? それだと、そちらは海を面している土地が多い分、漁業関係で有利になるじゃないですか。対してこちらの半分では砂漠が大きく占めています。これでは半分とは言えません。そっちが有利すぎます」
「あ、そう? じゃあ私はあまりこだわらないから、逆でもいいけ……」
「何を言っているのですか? それだと、そちらの世界に盆地や森林が多い分、農業や林業等で有利になるじゃないですか。対してこちらは極圏や人跡未踏の大海原があります。これでは半分とは言えません。そっちが有利すぎます」
「……お前こそ何を言ってるんだ。どっちも有利と言うのならばどっちでもいいじゃないか。何を変にこだわって」
「こだわるのは当然でしょう? 世界は一枚岩ではありません。例え遠くの地であっても、何かしらの影響は与えあっているのです。故に世界を半分に分けたのならその後の展望も考えて分けないと話にならないでしょう? まず間違いなく私とあなたは交易をする間柄になるのですから、条件は平等でなければなりません」
「いや、まあ言い分は確かだが……。私はてっきり面積で半分ならそれでいいと思ったんだけれどな」
「いくらなんでも考えが無さ過ぎると思いますよ。じゃあ私が一方的に有利なように面積の半分を戴きます。ええと、ここはここまでで、ここら辺も貰って……」
「おいおいちょっと待て! 緑の多い平地や海沿いばかり選んで、海のど真ん中や高い山だけを避けるのは良くないだろう!? 砂漠だけピンポイントでこっちに押し付けるな!」
「だから言ったでしょう。平等に分けるには話し合いが不可欠ですって。でも困ったことに、どうすれば平等になるかはなかなか難しいところです。どうしたら良いか……」
「……わかった。ならばお前が等分だと思えるように土地を分けろ。そして私が先に選ぶ。これなら平等だろう?」
「……なるほど、それはいいですね。わかりました、そうしましょう」