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「残念ですが・・・」
彼女、担当編集者が申し訳なさそうに口を開いた。これでもう何回目だろうか・・・
「・・・ダメですか。」
俺は俯きながらそう呟いた。今回ばかりはいけると思っていた、それほどの自信作だ。
「あの・・・ひとつお聞きしたいことが・・・」
彼女が俺の表情を覗き込むように上目遣いをして質問をしようとしていた。俺はそれを許可した。
「先生は何故いつもバットエンドの作品ばかりなのですか?今のところ殆どの作品がバットエンドです。やはりバットエンドだと少し読者の興味を失ってしまいます・・・ここは一つハッピーエンドの作品をお書きになるのはいかがでしょうか?」
ハッピーエンドね・・・そんなものはただの夢物語、そんな物語を読んで変な夢をみて人生を棒に降る人間が出てくるんだ。
「すみませんが、ハッピーエンドの作品は書きません・・・これで失礼します。」
俺はソファーから立ち上がり向かいに座っている彼女に頭を下げ、そのまま出口のドアへと向かい、歩き始めた。
「・・・どうしてですか?あの作品、『ハッピーワールド』はあんなに素晴らしいハッピーエンドの作品だったのにどうして・・・」
彼女はそう小さく呟いていたが俺は気づかない振りをしてそのまま扉を閉めた。
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