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人生のラブストーリーのエンディングが結婚なら、俺のラブストーリーは誰もが羨むハッピーエンドだ。ハッピーエンドの向こうを覗こうなんてしちゃいけない。
結婚して6年、この会社に中途採用されて6年。この会社の福利厚生には感謝している。社内託児所兼保育所。おかげで子供が産まれても待機児童問題なんかに悩まされずにすんだ。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはようございます、田中先生」
目の前の男性保育士はここ一年で雇われたまだ新人だ。
「歩生(あゆき)帰りはママが迎えに行くから」
「わかった、パパ、お仕事頑張って」
「歩生くん、じゃあ」
『行ってらっしゃい~』
同じ建物内なのに楽しげな保父と息子の様子を見れば頬が緩んだ。
人生にラブストーリーは何本あるのだろう?
部署をまたいだ社内会議で人生の中で切り捨てたはずの人間と再会した。
確かに向こうは芸能人でこっちは化粧品メーカー。自分の経歴やスキルを考えれば離れようにも離れられない関係だ。
昔から磨いた技は上がったようで、ただのモノマネ芸人は車会社のCMとタイアップするらしい。
女性ジャズシンガーを得意とした彼が今度は女性R&B歌手。俺はアイツのメイクじゃあないが、うちの開発した女性化粧品を使ってもらわなくちゃならない。タイアップのタイアップか撮影用メイクにあわせて自社製品を魅力的に見せるにはやっぱり俺の経験とスキルは必須だ。
ぼんやりと、アイツと会う事になったら、何時いらいだろうと思った。
思いでの中では、俺の結婚式の前日、過労で倒れたと言う話を聞いていらいだと思ったら、自分がどれだけ身勝手で、薄情ものか思い知らされた。
この会社は福利厚生が充実していて、化粧品メーカーなので社員食堂の美容と健康に気を使ったメニューは会社見学ツアーのお客にも評判がいい、女性社員や研究開発部署に評判がいいのは社内温水プールつきジムだ。
ジムは女性社員だけでなく、研究開発でこもり気味社員も気晴らしによく利用している。社主いわく良いものを作ってもらうためには良い環境から。
そして俺もよくありがたく使わせてもらうわけだ。
こういう時だよなぁ、大きいきちんとした会社入って良かったって。
気晴らしに走りに来た俺は気づけば一台のランニングマシンを占領してしまっていたらしい。
自分が吐く息の音の他マシンの軋みと他人の声は聞こえていなかった。
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