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同じ制服を着た学生たちは、遅刻しまいと急ぎ足で学校へ向かう。そんな彼らとは正反対に、すっかり悄然とした様子の杏子の足取りは重い。
生徒たちが次々と杏子の横を追い抜いていく中、彼女は酷く鈍重な足で歩いた。
「あ、杏子ちゃん! おはよー!」
その時、後ろから、実に幸せそうな声が聞こえてきた。
振り向く前から、その声の主が友人のものだと分かった。ここまで快活で愛らしい発声で呼ぶのは、杏子の知る限り一人しかいなかったから。
「あぁ、美菜花ちゃん。おはよう」
杏子は振り返って挨拶を交わす。親友の手前、無理やり笑顔を作ってみたものの、表情は硬い。
そんな杏子の顔を見て、美采花は思いもよらぬ救いの一言を言い放った。
「あれ、杏子ちゃんコンタクトにしたの?」
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