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生きていきたいと思うことは今でもあまりないし、消えてしまいたい気持ちもあるけれど
あの人の後を追いたい気持ちも今はない。
シュウや会社の人、何より唯人さんとの出会いで私の世界は少しずつ壊れて今は小さく作り変えられている気がする。
「……さん、虹子さん」
「え?」
考え事をしていて聞いていなかったが唯人さんが少し目を細めてこちらを見ていた。
「虹子さんがレダみたいに綺麗すぎて困ってました」
「は、え……?」
あまりにも大袈裟に褒めるから、だんだん嘘に聞こえてきてちょっとムカついていると
「あ、今ちょっとムッときましたね」
唯人さんが笑って私の手を握った。
「これ、大丈夫です。もっと怒ったりしても平気ですから、はい」
なぜ急に握られたのかと思えば、私が自分の手の甲に爪を立て、食い込ませていたのをそっと離してくれたようだった。
無意識に自分を抑える癖があるのを唯人さんは見抜いたのだろう。
「ごめんなさい」
「そこは謝罪より、にっこり笑ってありがとう唯人さん、大好き、でいきましょう」
咄嗟に謝った私にそんなことを言うからそこは一生懸命言葉を紡ぐ。
「本当にありがとう……唯人さん」
大好きとは、さすがに言えない。ただ、すこし笑ってみようと思って自分では微笑んだつもりだ。
すると唯人さんは満足そうに手をポンポンと優しく叩いてその後に擦った。
「はい、よくできました。いやぁ嬉しいなぁ、やっぱり好きだなぁ。さて、今日はここまでにしますか」
唯人さんが伸びをして、資料をまとめ始めたので私も慌てて片付け始めた
「はい」
真っ直ぐすぎるその気持ちにちゃんと答えられる日が来るのかな。そんな風に考えながら
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