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綺麗な二重の猫目はキラキラとしていて、通った鼻筋に真っ直ぐな眉毛、唇はその目許とは対照的に少女のようにやや赤くふっくらとして三日月のようなカーブを描いていた。
(綺麗な男性……)
けれど少し寂しげな、美しいのにどこか空虚な顔を見て
……似ているのだろうかなどとふと思い、その男性に心を何となく掴まれたのだった。
私、虹子(こうこ)はとにかく鈍感らしいと自覚はあった。
あまり人の気持ちを汲み取る事が出来ない。友人も少なく、特に趣味もなく淡々とした地味な毎日、独り暮らしはかなりシンプル。
昼間はOLをしていて、こうやって夜は幼馴染の副業のカフェを手伝っている。
男性に声をかけられて付き合ってみたりはするが、とにかく相手に興味が持てないから付き合い方もわからない。そしていつの間にかフラれてしまうのだ。
そしてそれは男性に対してだけではなく女性に対しても同じようで、友だちもいない。
あの時から私の心は止まっていて、動かない。
誰にも動かすことが出来ないみたいだ。どうやら私自身にも出来ないことだった
(息をしているだけで苦しい)
そんな時にふらりと現れて救ってくれたのが唯一昔から繋がっているこのカフェのオーナーのシュウだった。
だからだろうか、あのカフェでフラれていた人付き合いの上手くなさそうな男性になんとなく親近感が湧いてしまったのは。
たぶん、いや恐らくあの女性は星なんて全く興味がないし、他の事をして欲しかっただろうに、あの彼は気付かなかったんだろう。
そんなことを考えながら店をあとにして街を歩き出せば今日は嫌になるほどのイイ天気だった。何となく見上げた空には白い月。あの月を見るとどきりとしてしまう。
こっそりと青空に隠れてこちらを見て微笑んでいるようにも嘲笑っているようにも見えるからだ。
私に星々を教えてくれた人はもう星になっただろうか。
(見上げたら会える?)
「星かぁ……久々に見たいなぁ」
久々に星を観に行こうかと考えた。
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