プロローグ

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「だ、旦那。なにを・・・・・・」 「いや、なに。可愛い弟子が珍しく落ち込んでいるようだからな。慰めているだけだ」  目を白黒させる柘榴に笑いかけ、八月は言った。 「俺一人じゃ、この先困る事も多いだろうからな。その時は頼むぞ、柘榴」 「・・・・・・旦那」  柘榴の声が僅かに湿り気を帯びる。  見つめ合う主従はさらに言葉を交わそうとしたが。 「・・・・・・いい話だな」 「まったくだべ」  外から聞こえてくる鼻を啜る音に、柘榴はがっくりと肩を落とし、八月はからからと笑うのだった。  ーーかつて無双の剣豪と呼ばれた男は、巫女の願いを叶えるために彼女の体を借りて蘇り。  その従者であった若者は、巫女の飼い犬だった白犬の躰を借りて再び主の元に寄り添った。  一人と一匹の旅は、まだ始まったばかりである。  
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