ひとつ

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 八月は紅い唇に笑みを浮かべ、腰を落とす。 「素手の稽古など、いつぶりかな」 「稽古と抜かすか」  侮られたと感じたか、櫻井は怒気を滲ませて剣を振るう。  鋭い横凪ぎの一閃が八月に放たれた。  しかし。 「未熟」  笑みを浮かべたまま、八月は一歩を踏み出した。 「なに!?」  櫻井は刮目した。  八月は流水の如き動きでするりと櫻井の剣を躱すと、彼の手首をつかみ、足払いを掛けたのだ。  動の中の静。  堪える事も出来ずに床に転がった櫻井の頸に細身の短剣が添えられる。 「さて。これで話を聞いてもらえるかな?」  苦々しげに見上げる櫻井に艶やかな笑みを向けて、八月はのんびりとした口調でそう言ったのだった。  
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