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ジリジリと焼けつくような暑さの中、セミが唸るように鳴き続けていた。
「あちぃな、仁。」
「やめろよ、暑いと言ったら余計暑くなんだろ。」
「なんだよ、その理屈。」
学校帰りに友人の草間仁と自転車でコンビニに寄り、アイスを買うのが日課になりつつあった。
「なあ、尊、そーいやあの話知ってるか?」
「あの話?」
コンビニの前でしゃがみこみ、ガリガリとかぶりつきながらアイスを食べる仁は、少しトーンを落として話し出した。
「ほら、体が半分になっちまうやつ。」
「そーいや、何かあったな。なんなの、あれ。」
「この先にある踏切で、轢かれた男が真っ二つになったらしいんだよ。勿論即死だったけど、そいつの霊が夢に出て、お前の体を半分よこせ~って追いかけられる。逃げ切れれば二度と現れないけど、捕まれば・・・」
そこで仁は勿体ぶるように言葉を止めてみせた。
「なんだよ。」
俺は溶けてくるアイスを下から舐めながら、仁に目を向けた。
「真っ二つにされちまうらしいよ。」
「なんだそりゃ。勝手に夢に出て、捕まれば真っ二つとか、理不尽すぎんだろ。大体、どーやったら夢に出てくるんだよ。」
俺はゲラゲラ大声を出して笑ってみせたが、仁は真剣な顔をして「この話を聞いたらだよ。」と答えた。
「おい、待てよ。じゃあ、俺の所にも奴が来るのかよ。まあ、来たところで俺は逃げ切れる自信があるけどな。」
元々足を痛めて辞める前は陸上部だったし、今でも走りには自信はある。
「そうだよな。だから、尊に話したんだ。」
「・・・・・・なに、お前まさか、本気で信じてるの?」
「・・・・・信じてなかったさ、昨日までは。」
「昨日までは?」
急に首筋を冷たい風が通りすぎた。
誰かが首を撫でたような感覚に、背中がゾクリと震える。
「俺も、この話を聞いて馬鹿らしいと思ったんだ。でも、昨日出てきたんだよ。その男が・・俺の体の半分どこだ、って。走って追いかけてくるんだよ。」
「馬鹿だな、そんなのただの夢だろ。第一、お前無事じゃん。逃げられたってことだろ。」
「いや、俺は・・・逃げ切れなくて、捕まったんだ。」
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