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「尊、大丈夫なの?」
「大丈夫だって。」
母親は昨日のこともあり、今日は休めばと言ってくれたが、俺は一人で居たくなくて学校へと向かった。
勿論、学校では仁の話でもちきりだったが、逆に周りは配慮して俺に深くは聞いてこなかった。
「成島くん。」
「早瀬か、なに?」
「仁君、昨日亡くなったって。もしかして・・・・半分男のせい?」
早瀬は中学から一緒の同級生で、特に目立つような子でもなく普通の女子だった。
「・・・・お前、なんでそれ。」
「ごめん。」
「お前か。お前が仁に話したのか?」
俺は彼女の肩を掴んで睨み付けたが、彼女はごめんなさいと項垂れ、周りが止めにはいる事態になった。
落ち着きを取り戻して彼女に話を聞くと、早瀬も他の奴から話を聞き半分男に追いかけられた、早瀬が聞いた話では、他の人間にその話をしない限り、夢の中で逃げ切れてもまた奴は現れるというのだ。
彼女は逃げ切ったが、誰かに話せばその人間が被害に遭う事を考えて悩んでいたらしい。
仁は早瀬が悩んでる様子を見て、引き受けたそうだ。
「あいつ、お前の事好きだったからな。」
放っておけなかったんだろう。自ら死ぬことになったとしても。
早瀬は声をだして泣き出し、俺は暫くその背中をさすってやった。
早瀬の言うことが本当なら、俺はまた奴に追いかけられる事になる。
そんなのは嫌だ、だけど、誰かに話すなんて・・・・。俺もまた早瀬と同じ悩みに苦しむことになった。
ーーーーーーー
あれから数日。
俺は毎夜くる悪夢に苦しめられていた。
今日は逃げ切った。
でも明日は?
一日一日過ぎていく度、疲労が重なり学校へ行く事が困難になり部屋へ引きこもった。
「もう限界かもしれない。」
走るのを諦めれば、こんな思いをしなくて済むんだよな。
そんな考えさえ頭を過ることもあった。
何度めだろう、半分男に追いかけられる中、もう片方にいる仁が「尊・・・話せ・・・誰かに・・・」と後ろで絞り出すような声をあげた。
その日もなんとか逃げ切る事が出来たが、目覚めた時、両目から涙が溢れていた。
暫くの間、ボロボロと、大量の涙が頬を濡らしていた。
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