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俺は半分男の話を陸上部のエースに話した。
この男なら逃げ切ってくれるんじゃないか、そういう期待はあったが、やはり罪悪感が強く、両親に無理やり頼み込んで遠くにある全寮制の高校へ転校した。
あのまま学校にいて、どうなるか見届けるなんて事は出来なかった。
辛かった、苦しかった。
でも、俺は逃げた。
何もかも忘れて新しい環境でやり直す、それが今の俺にとっては最良のリハビリでもあった。
ーーーーあれから数年
大学に入り、彼女も出来た。毎日平凡だかそれが幸せだと感じる。
「尊、どーしたの?」
「いや、なんでも。」
今日は彼女と花見に来ていた。
手を繋ぎながら、桜並木を歩いて片手に屋台で買ったリンゴ飴を持ちなから「綺麗だね」と微笑む。
「そうそう、さっき友達から聞いた話があって・・・ん、と。半分男、ってしってる?」
無邪気に彼女が笑う。
俺は黙って彼女の話を聞いていた。
「そうなんだ。」
彼女はさっき聞いたばかりなら、そのまま俺に話したから、奴が現れる事はない筈だ。
良かった。
桜を見上げて、ぼんやり昔の事を思い出していた。
逃げられない。
また悪夢が始まろうとしている。
「カラダ・・・・・ハンブン・・・・チョ・・ウ・・・ダイ。」
終
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