半分あげるから

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 俺は当たりくじを丁寧に封筒へ入れると、鞄へ入れ部屋を飛び出した。  思えば我が家はとても裕福とは言えない家庭だった。  小さい頃は周りの友達が持っている玩具やゲームなんて買ってもらえたことがない。  必然的に自分で似たようなものを作る技術だけは向上した。……ダンボールが主な素材だけど。  そんな俺に父はよくこう言った。 『銭がない方が心は豊かに育つ。金持ちなんてのは皆悪さして儲けてるんだ。いいか? 身に余る金は身を滅ぼす』  お金=悪。  俺はそんな固定観念のもと育った。  だが、今目の前にぶら下がっている大金は俺が真っ当に働いて稼いで得た金で買い、俺が運を掴んだものだ。  罪悪感を感じる必要なはい。  無事に銀行で手続きを済ませると、“その日から読む本”という本を貰った。  高額当選した人へ向けたアドバイスが書いてあるものだ。帰宅するとそれを熟読した。  要約すると、 ・当せん金の使い道について ・当せんについて知らせる人をリストアップすること ・仕事は辞めないようにすること ・冷静になって落ち着くこと  他には当せん金の分与にかかる贈与税などの税金問題や資産運用、遺言書の作成などについても書いてあった。 「なんだよ遺言書って……」     
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