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背中にゾクリとしたものを感じたが、確かにこんな大金を所有していたら生命を狙われる可能性だってある。
俺は今一度玄関の施錠を確認するとチェーンを掛けてからベッドへ腰掛け、スマホを見つめた。
やはり親には言うべきだろうか。
いや、もしも危険が及ぶようなことがあったら後悔してもしきれない。
「…………」
俺は悩んだ挙句、誰にも言わないことに決めた。
それから半年の月日が経った。
入金されてから最初の1ヶ月は通帳を肌身離さず持ち歩いたり、家に入る時には周りに誰もいないか確認してから入るなど警戒していたが、最近では自分に高額の預貯金があることすら忘れかけていた。
ちなみに5億には1円も手をつけていない。
そんな時だった。
このマンションに住み始めてから約2年、初めて隣人と顔を合わせた。
「あ……こんばんは」
「こんばんは」
俺が帰宅するタイミングでお隣さんは外出するようだった。
それにしても……てっきり男性が住んでいると思っていたのに予想に反して女性だった。
しかも、どこか妖艶な感じの美人だ。黒髪のロングヘアが目鼻立ちがくっきりとした顔立ちによく似合っている。
「いつも煩くしてすみません」
俺が騒がしくした時など、壁を殴られるので気分を害しているかと思い、この機会に頭を下げた。
「いえ……」
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