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「そうよ? あそこの壁は薄いからこっちが静かにしていれば聞こえてしまうの」
盲点だった。
俺が俯いていると彼女は続けて驚くべき事を告げた。
「でも私はそれ以前から知っていた。私はね、お金を持っている人間の匂いがわかるの」
「……は?」
「ねぇ……」
そう言って彼女は俺の首へ両手を回した。
「半分ちょうだい?」
耳元で言われ、肌が粟立つのを感じた。
「は……半分あげたら彼女になってくれる……?」
当然、お金の事だと思った。
「ふふ……私ね、バンパイアなの。お金持ちの人間の血が大好物なのよ。だから、私の為に貴方がお金を使い切る前に……」
そして、俺の首筋にチクリと熱が走った。
それまで煩いくらいに騒いでいた鼓動が、少しつづ静寂へと向かっていく。
夜風が木々の葉を揺らす音さえ、どんどん遠くなっていく中で俺は絶叫した。
――父さん。やっぱりお金は身を滅ぼすみたいだ。
次に目覚めた時、俺は半分人間ではなくなっている事だろう。
【了】
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