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「じゃあ一回ワックスを拭き取ってまたさしていきますね。」 「はい。あと、ラダーの反応をみてほしいです。カチッと引っかかるところがあるんです。」 「ペダルに?」 「はい。」 「オーケー。」 三崎さんは工具を持って主翼に上がった。 「ここで見ていてもいいですか?」 「はい、どうぞ。」 出っ張った作業部屋の前に置いてある椅子に座ってカイトを眺める。 三崎さんはキャノピーをあけてコックピットに潜り込んで見えなくなった。 格納庫を見渡す。 本当に綺麗だ。 IYなら格納庫に常に関係ない奴らが何人かいて、中には死んでいる奴もいた。 三崎さんの作業部屋には窓があり、中が見えた。 流石に少し散らかっている。 昨日、資料をたくさん見ていたからだろうか。 古い型の泰風の設計図が見える。 見せてもらいたいけど、話しかけて作業を中断させたら悪いなぁ。 まだまだ見ていたかったけど、ミーティングの時間が近づいてきたので仕方なく立ち上がり、作業をしている三崎さんに呼びかける。 「戻られますか?」 手を止めた三崎さんがこちらを向く。 「はい、ミーティングがあるので。」 「そうですか、ではまた明日。」 「はい、また明日。」 格納庫を出て宿舎に戻った。 「こんな時間まで機体を見ていたのか?」 階段を上がったところにいた夏原が呆れたように言う。 「あぁ。もっと見ていたかった。」 「整備士も一緒に?」 「そうだよ。」 「はー、かわいそうに。」 「信頼できる整備士だ。」 「向こうはハズレくじ引いたと思ってるぜ。」 「なんで夏原にそんなこと分かるんだ!」 「おいおい怒鳴るなよ。もうすぐミーティングだ。準備しろよ。」 「わかっている。だから戻ってきたんだ。」 いちいちカンにさわる奴だ。
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