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俺は飛火の胴体を指先でなぞるように触って、ゆっくりと歩く。
主翼を撫でる。
「カイト、明日も飛ぶんだぜ。楽しみだな。」
スポイラーの線を、ナンバーの塗装を、尾翼の角度を、俺は丁寧に撫でる。
愛おしくてたまらない。
「春名さん、中でどうです?」
作業部屋から三崎さんが呼び掛けてくる。
振り返ると小窓の向こうで三崎さんがウイスキーのボトルを掲げていた。
俺は右手を挙げてそれにこたえた。
「なにか気になるところありましたか?」
三崎さんはそう言いながら氷の入ったグラスにウイスキーを注ぐ。
「いいえ。」
俺は返事をして座る。
「なんだか、確かめるように触っていましたね。」
見られていたのかと恥ずかしくなって俺はふっと笑った。
「嬉しくて。」
返事がないので三崎さんの顔をみてみると、三崎さんは不思議そうな顔をして俺を見つめていた。
「かっこいいなぁ、乗りたいなぁ、こいつで飛んで戦地でダンスしたい…そう思ってた飛火が俺の機体なんですから。」
そう言うと顔がにやけてしまう。
「毎日飛火に乗って飛んでいるなんて、夢みたいです。」
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