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「どうぞ。」
三崎さんが俺の前にグラスを置く。
「いただきます。」
ウイスキーを舌に乗せると戦地の景色が頭の中にじわりと広がる。
煙を上げて墜ちていく飛行機。
真っ黒な海に真っ黒な煙が溶けていく。
何機もの飛行機がダンスして、キャノピーに当たる太陽が煌めく。
「楽しいです、とても。お前はIYを出たら飛火に乗って飛ぶんだぞ、と昔の自分に教えてやりたい。こんな未来が俺にあったなんて。」
「春名さん、まだまだ通過点です。未来はもっともっと続くんですよ。」
「ええ、でも、明日墜とされるかもしれません。」
俺は笑ったが三崎さんは笑わなかった。
「そんなこと、冗談でも」
そう言って三崎さんは目を閉じて首を横に振る。
「今日だってうちの軍が3機墜とされたって…。春名さんは大丈夫、そう思っててもやはり機体が帰ってくるまでは不安なんですよ。春名さんの機体が、カイトが戻ってくるのが見えると本当に安心しますし、嬉しいんです。」
三崎さんの言葉に俺は笑った。
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