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まだ陽は高いが、街の方まで行く気にはなれないし部屋に戻って荷物の整理をする気にもならない。 広がる芝に土の道路。 カフェバーとレストランと、マーケットが並んでいるアシスと教えてもらった此処は、街と基地の丁度間にある。 マーケットを覗くと少々奇妙だった。 食料品や生活雑貨、そして楽器屋と花屋があった。 花屋については向こうを出発するときに聞いていた。 「STのやつらはやたらと花を贈る文化があるぞ。」と。 冗談かと思っていたが、昨日の早朝到着してから簡単な挨拶回りと基地の説明を受けたが、会う人のほとんどが花を渡してきた。 それさえも手の込んだ冗談かと思ったがどうやら本当にそういう慣習があるらしい。 マーケットで花瓶と花を買った。 花瓶をショルダーバッグに入れて花を片手に握って走る。 施設までは5キロ程だ。 「おにいたんおにいたん!」 振り返るとガキがボロい自転車に乗って追い掛けてきていた。 手にナフキンの紙飛行機を持ったまま。 その時、風が吹いて砂埃が俺達の間に巻き起こった。 ガキは一旦足をついて紙飛行機を持つ反対の手で顔を擦ってまたペダルを漕ぎこちらに走ってきた。 「ボックも、チキに行くんら!」 俺の隣でまた足をついて俺を見上げる。 「お前、本当に昨日の朝俺が飛んでいるのを見てたのか?」 「ハイ!みていまひた!」 「空はまだ暗かったろう?」 「うーん、暗ちゃった。れも、ようく見えまひた。」 「どこから見てたんだ?」 「みーとー。」 「はあ?」 「み、い、と、う!」 「わかんねぇな…」 俺は呟いて煙草を取り出す。 風が強くてなかなか火がつかない。 「お前、街の子なんだろ?基地は遠いからもう帰れ。」 「街の子らないんら。おにいたんといっとに行くよ。」 ガキは自転車を漕ぎ出した。 キーキーと音を立てている。 その音がまた俺をイラつかせた。 「オンボロな自転車だな。キーキーうるせえぞ。」 ガキの背中に言って俺も走り出す。 キュッと耳触りな音を立てて自転車が止まる。 ガキが目に涙を溜めて俺を睨みつけていた。 「俺の飛行機に口出す前に自分の乗り物のメンテナンスくらいしろよ。」 ガキの目から涙が溢れる。 なんなんだ、このガキは。
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