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「アシスバーで変なガキに会った。」
「ガキ?」
「あぁ。昨日の朝、俺たちが飛んでくるのを見たって。イーグルを。」
「は?機体のマークなんて見えるわけないだろう?」
「見えたと言っていた。ほんとに奇妙なガキだった。」
「誰かから聞いたんじゃないか?」
「俺がアシスを出ても自転車を必死に漕いで着いて来てた。メンテナンスのされていないキーキーうるさいボロい自転車だ。」
「お前、そのガキを小突いたりしていないだろうな?」
イヒヒ、と夏原は笑った。
「小突いたりなんか、していない。」
「お前担当の整備士に言っておいてやったぞ。カイトはメンテナンスにうるさいから面倒ですよって。」
「余計なこと言うなよ。あんなボロの飛行機恥ずかしいよ。」
「ハハハ、確かにな。でも他の新しい飛行機に乗るのも嫌だろ。」
「そりゃそうさ。でもやっぱり不安だな、知らない奴に機体を触らせるのは。」
「ここはIYじゃない。だれもいたずらしないさ。格納庫も清潔できれいだったし。」
「屋根もあったしな。ははは。」
階段から話し声が近づいてくる。
コミュニティスペースに入って来たのはZZ基地からここST基地のイーリック部隊に配属された3人と、先輩のリュウさんだった。
ZZからのやつらは花を抱えている。
「イーグルさん、カイトさん、どこも行かれてないんですか?」
「またそんなに花を貰ったんですか?」
イーグルこと夏原がチーターさんの質問を無視して言う。
チーターさんの名前は知らない。
俺たちは機体のマーク名で呼び合うことが多い。
決してそう言う決まりではないのだが、仲間が死んでしまったとき、本名を知っていると余計に悲しい気がするから、聞かないようにしているのかもしれない。
「リュウさんにB棟を見せてもらったんですよ。」
「あぁ、生徒達の。」
B棟はSTで学ぶ生徒達の校舎であり宿舎らしい。
「ヒーローになった気分でしたよ。きっとイーグルさんとカイトさんが行ったら大変な騒ぎになります。」
「大袈裟だなぁ。」
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