第1章

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妊娠してから毎晩夜空の星に願った、「授かったのが女の子でありますように」と。 でも、出産して初めて我が子を抱いたとき看護師さんに、「立派な男の子ですよ」って言われて落胆したわ。 旦那は男の子を欲しがっていたから、万歳三唱して跳ね回っていたけどね。 あんなに可愛い顔立ちなのに、女の子じゃなくて男の子なんて酷いと思わない? 旦那は可愛い顔立ちを見て、男として此ではイジメの標的になると言って、幼稚園に入る前から空手の道場に通わせた。 絶対そのせいよ! 一があんな性格になったのは。 中学の担任に呼び出されて聞かされたのは、息子が顔の事でからかわれると直ぐ暴力を振るうって事。 幼少の頃から空手を習っていたから、身体の大きな上級生と喧嘩になっても互角以上の殴り合いになるのだって。 学校中の人達に狂犬って言われていた。 息子が高校生になってから嬉しかったのは、喧嘩した相手が負けた腹いせに狂犬と一の名前を合わせて「ワンコ」って呼び、それが定着した事かな。 定着したのは、「ワンコ」って呼んだ子と喧嘩のあと仲良くなって、その子が広めてくれたのだって。 狂犬ってあだ名より、「ワンコ」ってあだ名の方が愛玩犬みたいで可愛いじゃない。
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