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小さなエプロンを付けた少年は
母親の説明を聞きながら、その横で一緒に餃子の皮に餡を乗せる。
手つきこそ真似てはいるものの、少年はなかなか適量の餡を乗せることができず、
大量に乗せた餡が何度も何度もはみ出してしまう。
たどたどしい手つきで苦戦する少年に、母親はお節介とは思いつつも
「ねぇ、翔くん。プレゼントのお金の残りはお母さんが出してあげてもいいわよ。」
と助け舟を出す。
しかし、少年は大きく首を振り、
「それじゃダメ!」
と頑なに拒んだ。
「どうして?」
という母親の問いかけに、少年は真剣な顔を見せて答えた。
「それだと、プレゼントに僕の気持ちが半分しか入らないから。」
そう言いながら一つ目の餃子を成功させると、少年は小さくガッツポーズをしてから次の餃子を包み始めた。
母親は出来上がった餃子を見ながら、我が家のイケメンが心を込めて作った餃子はさぞ美味しかろう、と少し寂しさを感じた。
《了》
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