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 時は経ち、零れ溢れるほど満ちた。  あの日の夕焼けはすでに遠く、はるか昔の記憶となってしまったがその景色は鮮明に私の胸に刺さり、返りが食い込んだように抜けることはない。  もう、待った。いい加減待ちくたびれた。  すでにこれ以上の傍観も、達観も、俯瞰も必要は無いだろう。意思を持たぬ無欠の全能共はいつまでもここで指を咥えて見ているがいいさ。  私は欠陥品だ。  あの日の夢が、誰かのユメが人を喰って小賢しい現世になったに他ならない。もとより誰の役に立つものでも、誰の支えになるものでもない。  しかし、持ってしまったのだ。意識を、気持ちを。  それまでの景色がまるで砂糖菓子の様に溶け落ち、新しい色の付いた世界が新生する。美しい世界は同時に悲しみと哀れみを抱える物だった。 私は待った。  ただひたすらに。  救いがあるのだと、どこかに奇跡があるのだと。  しかし、夢のような奇跡も奇跡のようなユメも起りはしなった。今考えれば当たり前のことだ。この世界は『そのよう』に出来てしまっているのだから。  そう、それは己の責でもある。  遠い遠い、過去とも言い表すことすら馬鹿らしくなるほど遠い記憶。まだ、全てが一つだった頃の己の選択。  ならば、それを正し、全てをハッピーエンドに向かわせるのは自分の責務だ。  ならば再び述べよう。  時は経ち、零れ溢れるほどに満ちた。  これは死んだはずの神からの最後のお節介。  ちょうど、模倣に足る儀式が終了した。  願わくは、世界の救済を遂げんが為に。
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