Ⅱ*緋色の髪の女軍人

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◆砂漠の花,ラルパ(Larpa) ◇ラルパ駅 「いや~アンタを信じて良かった!!」 先ほどの奴隷達がノウェルに握手をしていた。 「おかげで逃げることも出来て大助かりだぜ!!」 「あぁ…良かったな。」 ノウェルは正直うんざりだった。ノウェルにとって列車を奪った事はあくまで自分の都合。奴隷達の解放もついでに過ぎない。 が、ノウェルも人の子。感謝されて嬉しくないということもなければ、人の感謝を無下にするほど冷たいわけでもない。 「ところで、アンタ逹はこれからどうするんだ?」 ノウェルは話を変えるため、切り出す。実際、列車の強奪の知らせは、シスイとかいう幹部の奴から届いてるだろうし、いつまでもここにいたらヤバイだろう。 「俺たちは教会に行くつもりさ。スピカ教団のな。」 「スピカ教団…か……」 スピカ教団とは、この世界の煌晶人(クリスト)のほとんどの人が信仰している、新興宗教のスピカ教をとりまとめる団体だ。 スピカ教は煌晶人を神の使いの末裔とし、精力的に保護しようとしている。 しかし何かと黒い噂も絶えないため、一方の源祖人からは支持を得ていない。 「あそこなら、俺らみたいな奴らもかくまってくれるからな。そっちはどうするんだい?いくらリゾート地のラルパとは言え、灼熱のディジア大陸の隅っこで。」 ノウェルは踵をかえして言い捨てた。 「アンタらには関係ないことだ……じゃあな。」 ─────── ノウェルは駅からそのまま大通りに来ていた。 『…ノウェル』 「あぁ…つけられてやがる。」 ノウェルは急いで路地裏に入った。 そして、物陰に隠れ、武器に手をかける。
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