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わたしの上で身悶えして呻く彼にしがみつき、声をあげて奥をびくん、びくんと震わせた。自分が彼をぎゅうっと締めつけるのがわかる。
…あぁ。
これ。…きもち、いい…。
くったりと甘い余韻に溺れながら満たされて横たわるわたしをぴったりと抱きしめながら、彼が耳許で心配そうに囁く。
「夜里さん。…どう?足りた?」
…。
どゆこと?
思わず物憂く不審げな色を滲ませて彼を見やるわたしに、高城くんは慌てたように誤魔化す口調になった。
「いえあの。…そういう訳じゃ、なくて。…単に俺、自信が今ひとつ…、ないから。ちゃんと夜里さんを満足させてあげられてるのかな…とか。俺なんかで」
そのしどろもどろ振りにようやく彼の言葉の意図に気づく。わたしは霞の晴れない視界の中で唯一間近に見えてる彼の顔をぼうっと見上げた。
「…わたし」
喉の奥で声が変な風に掠れる。多分、さっきまで思いきり喘いで声を出してたせい。深い意味はない。
「高城くんとして、物足りないなんて思ったことない。…全然そんなこと。考えもしなかったよ」
彼が焦りを隠すようにわたしを宥める声を出した。髪を撫で、目を見て話しかける。
「わかってる、夜里さんはそんなこと。…俺が勝手に、変に気にかけて。俺一人で満たしてあげられなかったらとか。余計なことだよね。なんか、ごめん」
わたしは彼から目を逸らし、そっと横を向いた。
そんな風に不安に思うのも高城くんからしたら無理ないのかも。わたしは沢山の男の人に何回も抱かれて、意識が薄れて自分を制御できなくなるほどびくびく何度もいくのが普通だ。クラブでそんな姿を晒してるんだから、そうじゃなきゃ物足りない、満足できない女だと思われても仕方ない。
でも。わたしの中ではあれと高城くんとのことは全然別なのに。いつもは相手が誰か認識できないくらい頭が真っ白に飛ばないと気持ちよくない。それは必然性があってそうなってることだけど、逆に高城くんの時は自分がしてる相手がこの人だって何度も確認しないと気が済まない。彼にこんなことされてる、って実感するたびに身体中がじんとなる。そういう『良さ』なのに。
…でも、彼からしたらわたしは数え切れないほどの男の人とするのが好きな淫乱な女でしかないし。実際もそうだし。
言い訳してもしょうがない。こんな、汚れてる身体だもん。
それでも高城くんはどういう訳かわたしを抱いてくれる。
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