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わたしの旺盛な性欲に内心で恐れをなしてるかもしれないけど。それでも何らかの悦びをここから得てくれてるんだと思う。
だったらそれで特に問題ない。わたしは彼の性欲の処理係だって割り切れば。きっと潔癖で人前で醜態を晒すのを良しとしない彼は、クラブなんかで欲求を満たすのが苦手なんだ。偶然こうしてわたしとする機会があって、それで今ではこれで安定して欲情を解消できる場がある。だからこれからも関係を保ちたいんじゃないかな。
そう考えると何となく今の状況の説明がつく気がした。わたしのことを心配して健康を気遣ってくれてるのも彼の本当の気持ちだと思う。でもわたしの身体に惹きつけられて欲情を感じてるのも事実だろう。彼はきちんとした男の子だから、そっちが目的でわたしに接近してると思われるのが嫌なんだと思う。
そんなこと気にしなくていいのに、と思う。少なくともわたしは気にしない。
だって、わたしも今、高城くんとこうしていたいんだもん。それが何故かなんて考えない。顔を見て、話をして、笑い合って身体をくっつけていたい。ただそれだけ。
こんな時間が永遠に続かなくても構わない。そんなことは最初から望んでない…。
「…夜里さん」
彼が遠慮がちにわたしの名を呼び、背後からそっと腕を回して抱きしめた。徐々に力が込められ、ぎゅうっと締めつける。
「ごめんなさい。…俺、無神経で。夜里さんを、傷つけた…、みたいで」
「そんなことない。気にし過ぎだよ。わたし、別に傷ついてなんかないよ全然」
わたしは笑って振り向いた。身体を捻って腕を伸ばし、彼の頭を撫でる。
「高城くんとするのは好きだし、いつも満足してる。そのことだけわかってくれればいいよ。あまり深く考えないで」
「そうじゃない。…そうじゃないんです、上手く伝えられなくて。変な言い方…」
彼はわたしの首筋に顔を埋めた。そこにつけた唇から直に低い声が身体に伝わる。
「ただ俺は…、夜里さんに無理とかして欲しくなくて。楽しくないのに、美味しくないのに、俺の前でそれを隠して誤魔化して調子を合わせなくてもいいんだって…。俺が自信がないから考え過ぎなのかもしれないけど。こんな風にずっと、思ってた人にどうしてかすんなり受け入れてもらえて。…夢みたいで。でも、本当のところはよくわからなくて。表面で合わせてくれてるんだったら、そのうち疲れてうんざりしてまたどっかへ行っちゃうのかと」
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