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髪を愛おしげにかきあげられ、耳や生え際に唇を押し付けられて目を閉じる。だったら何かを性急に変える必要はないのかも。彼は多分、あの場所でみんなに可愛がられて薄らいだ目を見開いてぴくぴくしてるわたしのことも嫌いじゃないんだ。だったら何となく気が進まなくなった、程度の理由であそこを辞める必要なんかない。彼にそういうわたしも、たまには見せてあげないと…。
それに、そうだ。わたしは不意に今日の会話を思い返して少し元気が出た。高城くんはこれからバイトの回数を減らすって言ってた。そしたらこの前みたいに恥ずかしいわたしを見られることも今までよりは減るかも。向こうは見るのは吝かじゃなくてもこっちは正直気が重い。でも、週一か二くらいなら、たまたまわたしが行く日が彼の勤務日じゃなくても仕方ないもんね。わたしにだっていつ行けるかは都合があるし…。
「夜里さん。…俺の前では、正直でいて下さいね。俺、どんな夜里さんでも絶対、…受け入れられるから。ぜんぶ」
彼の手のひらが愛玩するようにわたしの背中や肩を撫で回す。
「俺には、何にも隠さなくていいよ。…そのままの夜里さんでいて…」
「うん。…わかった」
そのままのわたし、ありのままの自分が何なのかがそもそもわからない。でも素直に頷いてその手に触れられるに任せた。彼はわたしを可愛がって、安全に守って世話をしたい。お腹いっぱいご飯を食べさせて、沢山の男たちとわたしの身体を分かち合って満たしたい。何となくそんな感じなのかな、と漠然とイメージした。
だったら大人しくそれを受け入れていよう。彼がそばにいてくれるこの間だけ。愛玩されるための、好色でお腹を空かせた頼りない生き物でいたい。高城くんがいないと駄目なこんなわたし。コミュ障も偏った変な性癖も彼が全部許容してくれる。
「…今日、泊まってく?」
控えめながら我慢ならないようにわたしの身体の微妙な場所に指を這わせ始めた彼に、目を閉じたままそっと話しかけた。彼はちょっと息を止め、ややあっておずおずと尋ねる。
「…いいの?そんな」
「明日日曜だから。… 高城くん、朝用事とかあるんなら」
「ないです、そんなの。…本当にいいの?なんか、図々しいみたいで」
「だって」
わたしは覆い被さるように上に回った彼の背中に腕を回して引き寄せ、身体を開いた。
「今から始めたら、もう遅くなっちゃうし、帰るには。
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