第11章 そのままの君でいて

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…あ、でも。ちゃんとお家に連絡は入れてね。ご家族の方に心配かけないように。それだけ、気をつけて…」 約束通り、彼と初めてデートした。最初からあまり飛ばしすぎて疲れさせないようにとの気遣いから海の近い公園を二人で歩いて行き交う船を眺めた。のんびりと木陰に座って話しながら過ごし、異国情緒の残る不思議な空気の堅牢な建物の間を歩き、中華街で食事した。なんか最近中華が続いちゃったな、結局、と内心でちょっと苦笑したけど。でもここまで来たらやっぱり中華じゃなきゃ。まぁいい、味は好きだし。特に不満は感じない。 そのまま一緒にわたしの部屋に帰り、セックスして二人でシャワーを浴びて狭いベッドで身を寄せ合って眠った。まるで恋人同士みたいだな、と馬鹿みたいなことを考える。先は見えないけど、今だけのことかもしれないけど不満はなかった。ただ満ち足りた気持ちだった。 そんな風に安定した生活を送るうち、再びクラブへ赴く日がやって来た。 例によってまた間が空いてしまった水曜日。火曜に顔を出さなかったので昨日加賀谷さんから文句の電話を受けた挙句のいつものパターンだった。エレベーターのボタンを気重く押しながら、高城くんの今週の勤務日をそれとなく聞いておけばよかったな、と今更ながら後悔する。しかしまあ、それを聞いてどうするか、問題はそこだ。わたしの気持ちとしては彼の勤務日を避けたくて知りたい訳だけど、教える高城くんの方はそれでいいのかな?とこっちは迷う。彼はわたしとむしろ、クラブで顔を合わせたいのか?そしたら、行く日をちゃんと教えたのにその日に来なかった、避けられたと感じないかな。 かといってわたしのえっちな姿、クラブで勤務中に見たいの?とも訊けないし。その辺は何となくお互いぼかされたままになっている。結局当てずっぽで水曜に決めた。今まで火曜に彼を何度か見かけた気もするし。例えば週一だったら顔を合わせる確率はそんなに高くない筈。 考えても始まらない。彼はわたしをクラブで見たくないって意思表示はしなかった。だったら最悪顔を合わせても、わたしが我慢すればいいだけの話だ。 「…ああ、やっと来た。もう、勿体ぶっちゃって。そんな憂鬱そうな顔しても身体はもう疼いてるくせに。…夜ちゃんって素直じゃないんだからなぁ」 「まぁまぁ。この子はその『良さ』だから。自分の身体が普通じゃなく性欲が強くて淫乱だって認めたくないんですよ。
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