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わたしをそっとその場に降ろし、そそくさとバスローブで身体を覆いマネージャー室へと連れていく。
加賀谷さんは戸口でわたしを待っていた。彼らからわたしを自分の腕に受け取り、支えたまま片手でドアをやや乱暴に閉める。本当にもう、躾の悪い連中だとぶつぶつ文句を言う声がそのまま耳に伝わるくらい近い。わたしは彼に体重をもたせかけて目をぎゅっと閉じる。
なんか、やばい。加賀谷さんの温かい身体。バスローブのタオル地越しに感じる感触はもしかしたら初めてかも、と漠然と考えた。わたしは彼に触れられた記憶は殆どない気がする。
決してわたしを傷つけない、絶対守ってくれるこの腕。
戸口で立ったままわたしは彼の首の後ろに両腕を回した。初めて彼にぎゅっと思いきりしがみつく。
「かがやさん」
その瞬間、何だか自分でもわからない感情の塊が喉の奥からどっと噴き出した。震える声が口から溢れる。
「わたし。…もう、無理、かも」
彼の肩に両目をきつく押し当て、わたしはそのまま泣き出した。
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