夜の猫、闇の底を走る・第６話

第11章 そのままの君でいて

その上でわたしが覚えてないのは無理ないと言ってたんだから勿論複数プレイ、乱交だったってことだろう。まぁ当然だ。一対一でしたのは高校の時の『彼氏』が最後、前に遡ってもあとは変態ロリコン大学生だけ。彼がそのどっちでもないことは論を待たない。
身に覚えはない、とは勿論言えない。わたしは眉根を寄せて思わず顔を顰めた。黒服たちの集団をまとめて『慰労』したことなんか何回もある。男性会員たちが帰ったあと、女の子たちと黒服全員でその場で乱交パーティみたいになることだってあるし。最近の彼はそういうのには参加しないみたいだけど、新人の頃とかは断りきれず素直に仲間に加わっていたんだろうから。
そんな時にお手合わせしていてこちらの記憶に残ってなくても全然おかしくはない。
高城くんはあの時何て言ってたんだっけ。そうだ、それ以来ずっとわたしのことを考えてた、諦めなくてよかったみたいなことを言ってた。今ひとつよく理解できないけど、潔癖そうで女の子たちとの行為にさほど関心が強いと思えない彼がどういう訳か複数プレイ、乱交の相手だったわたしに何らかの感銘を受けたってことだ。どういう種類のインパクトなのかちょっと想像もつかないけど。
そうしたら最初からわたしの性的嗜好、変態的所業は全部承知の上で何故かわたしに何か親愛の情を抱いたってことになる。そしたらあんな恥ずかしい、いやらしいわたしを見たからって今更動じることはないのかもしれない。見られるのは気が引けるってのは最近やっと高城くんを認識し出したわたしの勝手な脳内事情に過ぎないのかも。
いやそれどころか。わたしは表面上では話しかけてくれる彼に明るく受け答えながら頭の中でどんどん思考回路の迷路をさ迷い奥に進んでいく。そういうわたしと知っての上で何らかの好感や欲情を抱いてくれてるとしたら。…もしかしたら、彼がしたいのは『それ』込みのわたし？
つまり、高城くんは男たちに弄ばれてるエッチな玩具であるわたしに欲情を感じる。自分でも一回する機会があってその『良さ』が忘れられないでいた。でも潔癖で繊細な彼は他の男たちと女を共有して群れるように抱くのに抵抗があって以後はトライできない。だけど心の中でずっとわたしの身体に対しての欲求を抑えきれず…。
たまたまこういう成り行きになって、二人きりなら抵抗なくわたしとできることがわかった。