第四章 ザ・ド ヤーモモの出自を聞く

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ヤーモモの両目から涙が浮き出てきて二筋の川となって両頬を 伝っていく。 「僕に話してごらん」と、ザ・ドが手でやさしく涙を拭いながら 言った。 「私の母は、一人の旅人を愛して私を生んだの。私の父は祖国を 捨てての旅の途中で母に巡り合ったの。 母と暮らし始めて、父は旅をすることを止め、母のいる土地で 母の家の仕事を助けることで生計を立て私を育ててくれたの。 母の父は地方の領士で、その地方を治めていたの。 父は剣士として母の父のもとで働き、その剣の腕と知性で地位 を上げて行き、剣士隊を任せられるほどになっていったの。 私達親子にとっては幸せな時間だった・・・。 でも、私が十二歳になったある日、三人の剣士が父を訪ねて来た・・・。 父は、三人と数日話し込んでいたが、その顔は苦渋に満ちていた。 ある夜父が母に三人が尋ねてきたわけを話したの。 父が旅に出ざるを得なかったのは、父の兄に殺されそうになった からだったの、父の父はアメ国の王なの、王が病気になって倒れて しまった時、父の兄が次の王になるべく準備を開始板の、その際、 王のお気に入りで国民からも慕われていた父の存在が邪魔になっ たのね、兄王子は密かに刺客団を作り弟王子を消しにかかったのよ、 弟王子は兄王子との争いは本意ではなく、父である国王の病が癒える ことを願って国を兄に任せるべく旅に出たことを母に明かしたの。 母と出会う少し前に国王崩御を知った父は、祖国に帰らず傷心の身を 旅の風に任せて放浪を続けていたの。 十年以上も経って祖国から三人の剣士が父を探しだして、父に祖国 に戻ってほしいと懇願したのです。 三人の話では、父王がなくなって兄王子が国王の地位に着いたのは 良いのですが、その治政は国民を顧みない悪政を敷いたのです。 国民に重税や重い役務を課す一方自分は贅沢三昧の日々を送り、 国土は疲労を重ねていき、国力は低下の一方でした。 そんなアメ国の状況に隣国のソト国が目をつけ侵略の意図をもって 戦争を始めたのです。 新国王は自ら出陣することなく適当に部下を戦場に送っては敗北を 重ねる体たらくを続け、国民の我慢も底に着き始めました。 なくなった前の国王の忠実な臣下は新国王の下では遠ざけられて いましたが、国の惨状を見るにたえきれず、国王を打倒するため 立ち上げることを決意し、新国王に私の父を立てるべく、父を 探し始めていたのです。
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