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「――えっ?!学校を休む?」
「申し訳ない、伊織の体調がすぐれんでな……熱がありそうなんで今日は休ませる事にした」
「……そうですか」
昨日までピンピンしてたのに急に具合が悪くなるなんて、あれからまた蔵に入れられて風邪でも引いたんだろうか――。
……にしても元気だけが取り柄の伊織が学校を休むなんて、インフルエンザとかに罹ってるのかもしれない。
その場は『お大事に』とお伝えて学校に向かったが、次日もその次の日も――住職しか出てこないのでさすがに不審に思った。
放課後部活を休んで家に帰ると、差し入れ用のおにぎりと卵焼きと水筒をリュックに詰め寺の蔵の前を通って中を覗いた。
伊織の部屋は別棟の二階だが、裏から上るには高いハシゴが必要になるので、まずは近場から攻めたい。
格子越しに中を覗くと柱に縛られた伊織の他に誰かが目の前に立ち話している声も聞こえる。
『伊織のお父さん――にしては若すぎる…』
学校を病欠している本人は元気そうだし、罰にしては日にちも長すぎる。
立ってる人の後ろ姿は王子様みたいにマントをしていて、寺には不自然すぎてコスプレにしか見えない。
いつものお仕置きみたいに酸素を保てるよう一番外の扉は半分開けてあるが、中のドアに触るのは、人が居なくなってからがいい予感がし一旦は引き上げた。
伊織にあんな友達居なかったし、まさかの強盗……だとしても住職までグルになってるのも変だ。
「――どういう事なんだろう」
悪い予感で心臓が縮んだように痛むが、家に戻り武器になりそうな物を準備すると、日が沈むのを待ってもう一度寺に向かった。
『…この時間まで伊織が縛られてたら警察を呼ぼう』
ポケットにスマホを準備し、右手には小さなハンマーを持ち足音を立てずに蔵に近づく。
DIY好きの母は工具一式を持ってるが、さすがに電動のドライバーは重たいので俊敏に動けないし、敵に取られたら逆にこちらがピンチになる。
『伊織…待っててね!』
足音を立てないよう蔵に近づくと、明かりが灯っていたが中にいるのは縛られた伊織と住職のお爺さんとコスプレ君。
おまけに苛立っているのか声を荒げていたので、思わず四つん這いになった。
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