8人が本棚に入れています
本棚に追加
「美味しい……です」
「だろ?じいがお前の料理を覚えるまでここで厄介になるから客間を使わせてもらうぞ」
「えっ?!困ります!!」
「…よく考えろよ?悪いのは勝手に封印を解いたお前らだ。俺も久々に好きに動けるし、泊めてくれたらあいつらに危害は加えないと約束しよう」
ーーその日から伊織に内緒で、魔法が使える男子と執事に私の同居生活が始まる事になった。
彼はエルメといい格好からして王子らしい。執事の名はダル。私の自己紹介も済ませ、学校に行ってる間は掃除もしてくれてるし、帰ってからは卵焼きを作る毎日だが、意外と楽しめた。
ダルの料理は美味しいし、エルメは容姿は勿論だが目にかかる長めの髪は薄茶色に輝き、女装しても美人だと思う位魅力がある。
第一に母直伝の卵焼きをすごく気に入ってくれ、一人で寂しいと思っていた生活に励みが出来たようにウキウキしていた。
でも、そんな浮ついた様子の私に伊織も住職も気づいたらしく、部活終わりに走って帰っていると、寺を横切る際に呼び止められた。
「――凛、ここ二日様子がおかしいな。奴らも姿を見せねーし、まさかとは思うがかくまってないよな?」
「あ…あっ、当たり前じゃん!!魔術を使える王子なんて怖くて住めないでしょ」
「――俺、王子なんて言ってないけど?!」
「あの恰好見たらそう思っただけ!じゃあね!」
これ以上突っ込まれたら本当にボロが出そうだし、エルメ達も卵焼きをマスターしたら帰るんだから問題ないと言い聞かせ玄関に向かって走った。
――まだ二日しか経ってないのに少し寂しいと思ってる自分の気持ちも断ち切るように。
「凛さん、おかえりなさい。夕飯の支度は出来てますよ……と言いたいのですがどうやらバレたみたいですね」
私の手首を掴みダルが階段を駆け上がった直後、玄関のドアが静かに開いて伊織と住職がこっそりと中に入って来た。
『マズい…色んな意味で怒られそう』
嘘をついて魔法を使える人を家に住まわせ……伊織が怒鳴る図が想像出来る。
一階のダイニングを確認すると、階段を目指してくるのが見て取れ、心臓がうるさい位に騒いでいた。
登ってくる伊織と目が合い、思わず手を口に当てると、後ろのドアからエルメが現れ住職達は手には札が握られていた。
最初のコメントを投稿しよう!