王子と学生を半分

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「止めておいた方がいい。彼女はダルが作った料理を口にしてるから、そのまま連れて帰る事も出来るけど?」 「凛っ!!本当なのか!?」 キッと睨みながら聞かれ、小さく頷くことしか出来なかった。 「馬鹿、ドジッ!小さい頃に妖怪の話してやっただろ?迂闊に人から物を貰うなって」 「だって……エルメは妖怪じゃないし、ダルの料理は美味しくて」 「――だそうだ、味の好みも合いそうだから一緒に帰ろうかな」 「待て!分かった、要望を聞こう」  ダルから住職に希望が伝えられると、伊織は不服そうな顔をして私の隣に立ち、小さなゲンコツが落とされた。 「イタッ――!!」 「一人で抱え込んでんじゃねーよ、巻物の件だって悪いの俺なんだし、いつも助けてもらってんのに肝心な時に役に立たないなんてダサいだろ」 「……ごめんなさい」  心配しなくても料理が上手いダルは既にマスターしてる筈だし、もう居なくなる日も近いと思っていたが、様子を見ていたエルメの口からは意外な言葉が出ていた。 「卵焼きは高度な味でじいも中々作れない。長期戦になるから昼間退屈だし、俺も凛と学校とやらに行かせてもらう」 「――えっ?!」 驚いて思わず振り返ると、伊織は間髪入れずに反論した。 「てめぇ…調子に乗るのもいい加減に……」 「分かった。ただし、住むのは寺に変更してもらう。凛ちゃんに何かあってはご両親に申し訳が立たんからな」  今度はエルメが不服そうだったが、隣の寺も敷地も家も広いので泊まるには十分だ。  ちょっと意地悪で強引だけど、私にはそんな悪い人には見えないが、ここは住職の指示に従う方が間違いさそうだ。  彼は寺の親戚の子で、オーストラリアから日本に留学したという設定で次の学期から登校する事となった。    試験は勿論あるが、そんなモノは魔法が使える彼に取ってタテ前以外の何物でもない。  ついでに私の苦手な科目のテストも何とかして貰ないかと交渉したい位だった。  エルメがダルと寺の別棟に住むようになり、学校に通い始めて一か月経つ頃には人気者になっていたが、毎日の弁当の卵焼きのリクエストは変わらなかった。    昼間エルメが学校に行ってる間ダルは巻物から自分の世界に帰り、夜には彼も戻ってるようで毎日ここと異世界の半分ずつの生活。  様子を間近で見ている私は体調や、どこでこの世界の勉強をしているのか等気になっていた。
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