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「――おかえりなさい」
「ただいま、まぁ積もる話もあるだろうから……ダルにお茶の用意して貰ってる」
意地悪に光る緑色の目と、ニヤリと笑ったドヤ顔を見ると以前の事が走馬灯のように蘇る。
「伊織ではまだ俺の魔法に勝てないけど、凛のたまご焼きは恋しくなって用事を早めに片付けて戻って来た」
ダルは隣の家に菓子折りを持って住職や伊織を呼びに行き、私はキッチンで卵焼きを作っていた。
隠し味は少量の薄口しょうゆと母レシピの調味料――。
どの家庭でもお弁当に絶対入るであろうおかずを、何故か異国の王子と隣に住む王子は気に入っている。
母から教わった卵焼きは、王子様に喜んでもらう為の特別な味なのかもしれない。
ふっくらと巻いて今日も六個に切り分けると、お皿に乗せ王子様に半分ずつ食べてもらおうとニンマリと笑った。
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