愛憎

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「あ~はいはい、剛には可愛い彼女いるもんね!なんていったっけ、あの子。清純そうな」 真歩がカップを手にやって来て、カウンターに盛り付けてあるサラダからブロッコリーを摘まんだ。 私は水を止めて、手を拭きながら答える。 「清崎晴香さん――よ。 ね?剛さん」 「――」 剛は目を見開くと、ぎらりと狂暴な光を宿らせて私を見詰めた。 その目に射抜かれそうになるが、フイと顔を逸らし、真歩に話し掛けた。 「ねえ、今日は仕事は?」 「午後に生徒さんの予約があるけど、それまでは暇よ」 「じゃあ、一緒に悟志さんのところへ行かない? 真歩も一緒の方がきっと喜ぶわ」 真歩は真顔になるが、直ぐに溢れんばかりの笑顔になり頷いた。 「――ご馳走さまでした」 黙っていた剛がコーヒーを飲み干し、短く言って席を立ち、鞄を持ち玄関へと速足で行ってしまった。
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