453人が本棚に入れています
本棚に追加
「行ってらっしゃい……」
彼をいつものように追い掛けようと足を踏み出すが、思い直しその場から声を掛けるだけにした。
返事はなく、ドアの閉まる音がして、彼が行ってしまったのだ、と私は悲しくなる。
でもこれでいい。
今までと同じ様に接していたら、いつまでも彼から離れられない――
私の素っ気ない態度に、彼はなんと思っているだろうか。
二人きりになったときに、あの鋭い瞳で私に詰めよって来るだろうか。
そうしたら、一体どうやって彼から逃れればいいのだろう?
(いっそのこと、当分祐樹と一緒に寝ようかしら……)
二人きりにならない方法の一つとしてそんな考えが浮かぶが、私は溜め息を吐いた。
独立心が芽生えてきた祐樹が、母親と今更一緒のベッドで眠る訳がない。
私の事をいつも気にかけてくれる子だけど、いくらなんでもそれは嫌がるだろう。
最初のコメントを投稿しよう!