愛憎

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(取引きしましょう……) 不意に、昨日の森本の囁きが甦り、寒気に両腕で自分の身体を抱く。 問題は山積みで、どれもこれも解決を見ないような物ばかりだけれど、今一番に手を打たないとならないのは、彼の事だ。 彼はあの写真を持っている。 私が言う事を聞けば、消してくれるだろうか? つまり、私が彼に身体を差し出せば…… そこまで考え、寒気を通り越して悪寒と吐き気が込み上げ、口元を押さえて嗚咽を漏らす。 低く音を立てる洗濯機の前にしゃがみこみ、自己嫌悪に苛まれながら泣いた。 どれ程の時間、そうしていただろうか。 いつの間にか洗濯機は止まっていた。 重い身体をどうにか立たせ、私はエプロンのポケットからスマホを取り出して、文字を打ち始めた――
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